羊は毛を刈っても、すぐにまた元の姿にもどるように、コルクの採取も同様に行われます。コルクはコルク樫の樹皮から生産されますが、コルク樫は生命力が特に強く、樹皮を剥ぎ取ってもまた新しい樹皮を再生できます。植樹後、およそ25年に一度目の樹皮(バージンコルク)をはぎ取ったのち、9年後にはじめて上質なコルク樹皮を採取できます。次に9年後の時を経てゆっくりと新たな樹皮が再生します。つまり、木を切らずにいつまでも生産ができるのです。また、ムク材として使用できない樹皮もさまざまな方法で無駄なく利用されています。 まさにコルクこそ究極のエコロジー素材なのです。
このコルクが実は、ヨーロッパを砂漠化から守る「防砂林」として自然環境保護に不可欠な存在であることは、あまり知られていません。首都リスボンの南にひろがるアレンテージョ地方は、コルク樫の宝庫。ポルトガル国内でも一、ニを争う広さを持つ林がある地方です。
仮に私有地に立つコルクの木であっても勝手に木を切ったり、皮をはぐことは許されません。樹皮を採取したら次回は必ず9年後。たとえば西暦2001年は、1992年に伐採された樫からのみ樹皮を剥ぐことが許されます。樹皮の表面には、92年を表わす「2」の白い数字。伐採後の木肌には、「1」が書かれる。次回、ここに斧が振り下ろされるのは2010年になります。国ぐるみの、その姿勢こそが古から変わらぬコルクの林を守り続けているのです。
『すべてをリサイクルできます』
「バージンコルク」と呼ばれる一番樹皮(これは目が整っておらずワインの栓にはなりません)をはじめとしてワイン栓の抜き屑、採取時に出る粉砕材や皮、他のコルク製品を生産する際に発生する破片などが使われます。また使用済みのワイン栓も一部回収・再利用されており、小片や小クズはボイラーに入れ燃料として使用され、一片の無駄なく利用できています。←左がバージンコルク、右が9年後にやっと採取されるコルク。
しかし、国民のコルクに対する愛着心は深く、コルク林を伐採して空港の建設予定地に、との声が上がった時は非常に激しい抵抗が起こりました。そのため、建設計画は白紙撤回されたのだとか。世界に並ぶべきもののない、最大のコルク生産地。 これからも、永く永く、守り続けてほしいと心から願うばかりです。
前のページにもどる